会社で生成AIを使えるようにしようとしたとき、最初に出てきたのはセキュリティの問題でした。 私は、使うサービスやプランと一緒に、学習に使わない設定になっているかを調べて、資料にまとめました。 社員が仕事の文章を生成AIに入れているけれど、それが学習に使われるのかが分からない。困るのは、見る画面やページがサービスごとにばらばらなことです。 まずは、自分が今どのアカウントで使っているかを確かめるところから始められます。
私は、設定の名前を探す前に「誰の、どのアカウントで使っているか」を先に確かめます。 同じ Gemini でも、個人のアカウントと会社の Google Workspace のアカウントでは、入れた内容の扱いがまったく違うからです。 そして、設定を確かめたあとも、社外秘の情報を入れないことは変わりません。
最初に見るのは設定ではなく、どのアカウントで使っているか
学習に使われるかどうかは、サービスの名前だけでは決まりません。 同じサービスでも、個人のアカウントか会社のアカウントかで、扱いを書いたページそのものが分かれています。
たとえば Gemini です。個人向けの Gemini アプリのプライバシーのページには、仕事用・学校用のアカウントには別の扱いの規約が適用される場合がある、と書かれています。 そのうえで、会社の Workspace 向けのページへの案内があります。
この記事で見る3つの使い方を、先に表にすると次のとおりです。
| 使い方 | 入れた内容が学習に使われるか | 確かめる所 |
|---|---|---|
| Gemini(個人のアカウント) | 「アクティビティの保存」がオンなら使われる。オフなら、これからのチャットは使われない(フィードバックを送ったときは別) | 「アクティビティの保存」がオンかオフか |
| Gemini(会社の Workspace のアカウント) | 組織の事前の許可や指示なしには使われない(対象のエディションで使う場合) | 対象のエディションか(管理者に聞く) |
| Copilot Chat(会社のアカウント) | 基盤のモデルの学習に使われない | 新しいチャットのボタンの横に、緑色の盾が出ているか |
出典:Gemini アプリのプライバシー ハブ、Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ、Microsoft Copilot Chat プライバシーと保護
名前が同じなら扱いも同じ、と思ってしまいやすいんですよね。 でも「Gemini は学習に使われる」「Copilot は大丈夫」と、サービスの名前だけで覚えるのは、私はやめたほうがいいと思っています。 サービスの名前より先に、アカウントの種類を確かめる。表の左の列が、その理由です。
私なら、社内で使っている人に「そのアカウントは、会社から渡されたものですか」と一言聞くところから始めます。 自分で作った個人のアカウントか、会社から配られたアカウントか。本人が分からなければ、社内でアカウントを管理している人に聞くのが早道です。 あなたの会社で生成AIを使っている人は、どちらのアカウントで使っているでしょうか。
Gemini を個人のアカウントで使うとき:「アクティビティの保存」で扱いが変わる
個人のアカウントの Gemini は、「アクティビティの保存」がオンかオフかで、入れた内容の扱いが変わります。 ページの中での置き場所は、「Gemini アプリ アクティビティ」の中です。
オンのとき:保存され、学習を含む改善に使われる
Google のプライバシーのページによると、「アクティビティの保存」がオンだと、チャットが保存されます。 保存されたチャットの使い道は、生成AIのモデルの学習を含む、Google のサービスの改善です。 訓練を受けた人のレビュアー(Google の委託先を含む)が、チャットの一部を見ることもあります。そのため、見られたくない情報や機密の情報は入れないよう勧めています。
オンのときの保存は、初めは18か月で自動で消える設定です。3か月・36か月・消さない、にも変えられます。
オフにしても、すぐに何も残らなくなるわけではない
オフにすると、これからのチャットはアクティビティに残らず、AIのモデルの学習にも使われません。フィードバックを送ったときは別です。 ただし、オフでも、答えを作ることと保護のために、チャットは72時間アカウントに保たれます。
もう1つ、見落としやすい所があります。レビュアーが見たチャットは、アカウントから切り離して最長3年保たれ、アクティビティを消しても消えません。
「オフにすれば残らない」わけではありません。オフにする前に入れたチャットのうち、レビュアーが見たものは、消しても最長3年保たれます。


オフにすれば安心……いや、安心と言えるのは「これから」の分だけです。 オフにする前に入れた内容は、さかのぼって扱いが変わるわけではありません。
私なら、個人のアカウントで仕事の文章を入れていた人には、オフにしてもらう前に、何を入れたかを思い出してもらいます。 設定を変えるのは一瞬です。でも、すでに入れた分をどう考えるかは、そのあとにしか話せません。
一時チャットは、レビュアーが見ず、改善にも使われない
一時チャットは、人のレビュアーが見ることも、AIの改善に使われることもありません。 ただし、一時チャットも72時間は保たれます。
個人のアカウントで仕事の文章を扱うなら、選ぶ前に知っておきたいのは、この3つです。 正直、ここがいちばん誤解しやすい所です。
Gemini を会社の Google Workspace のアカウントで使うとき:学習に使われない、と書かれている範囲
会社の Workspace のアカウントで使う Gemini は、入れた内容が、組織の事前の許可や指示なしに生成AIのモデルの学習に使われない、と書かれています。 ただし、この扱いは対象のエディションで使う場合に限られます。
ここで出てくる言葉は、次の3つです。
- Google Workspace
-
会社が契約して社員に配る、Google のアカウントと仕事の道具の一式。
- エディション
-
Workspace の契約の種類。
- 管理者
-
会社の中で、Workspace の設定を決める人。
あなたの会社の Workspace の管理者が誰か、すぐに名前が出てきますか。
入れた内容は「お客様データ」として扱われる
会社のアカウントで入れた文章や、上げたファイルは、お客様データとして扱われます。 Gemini アプリでは、人のレビュアーがチャットやファイルを見ることはありません。 やり取りは組織の外に出さず、Workspace の中の Gemini の会話が見えるのは本人だけです。
出典:Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ
例外は、フィードバックです。本人が任意で送ったフィードバックは、製品の改善に使われ、最長18か月保たれることがあります。 そのフィードバックも、Workspace の生成AIのモデルの学習には使われません。
出典:Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ
保存の期間と、使えるかどうかは管理者が決める
保存の期間は、管理者が決めます。Gemini アプリは最大36か月で、初めは18か月です。 Gmail などのアプリの中の Gemini は、90日から無期限までの間で決まります。 管理者が設定できるのは、Gemini アプリや各アプリの中の Gemini を使えるようにするかと、会話の履歴を残すかです。
出典:Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ
会社のアカウントなら全部同じ扱いのはず、と思うかもしれません。 でも、この扱いは「対象のエディション」という条件付きです。どのエディションが対象なのかは、私は確かめきれていません。 だから、まず管理者に、うちの契約が対象のエディションかを聞く。ここを飛ばして「会社のアカウントだから大丈夫」と言い切るのは、早すぎると私は思っています。
Copilot Chat を会社のアカウントで使うとき:緑の盾で保護を確かめる
会社のアカウントで使う Copilot Chat は、入れた内容と答えが、基盤のモデルの学習に使われません。 保護が付いているかどうかは、画面の緑色の盾で見分けられます。
ここで出てくる言葉も、先に短くまとめると次のとおりです。
- エンタープライズ データ保護
-
会社で使う Copilot に付く、契約の条件にもとづいたデータの守り方。
- 基盤のモデル
-
答えを作るもとになる、AI のモデル。
- Microsoft 365
-
会社で契約する、Microsoft のメールやファイルの仕組み。
名前が変わったばかりなので、古い名前が出ることがある
Microsoft のページの冒頭には、Microsoft 365 Copilot Chat が Microsoft Copilot Chat に名前が変わった、という注が付いていました。 移行の間は古い名前が出ることがあり、組織のセキュリティやプライバシーに変更はありません。
出典:Microsoft Copilot Chat プライバシーと保護
Microsoft 365 Copilot も、Microsoft Copilot に名前が変わっています。
出典:Microsoft Copilot および Microsoft Copilot Chat におけるエンタープライズ データ保護
画面に出てくる名前と、社内の資料の名前が食い違っていても、あわてなくて大丈夫です。 名前を見比べるより、盾が出ているかを見るほうが早い。私はそう考えています。
新しいチャットのボタンの横に、緑色の盾が出ているか
Copilot Chat の入力と答えには、エンタープライズ データ保護が追加の料金なしで付きます。 画面の上の新しいチャットのボタンの横に緑色の盾が出ていれば、保護が適用されているしるしです。
出典:Microsoft Copilot Chat プライバシーと保護
会社で使う Copilot には、データ保護の補遺(契約に付く、データの扱いの取り決め)と製品の条項が適用されます。 入力と答えを守る契約の条件は、Exchange のメールや SharePoint のファイルと同じです。 お客様の指示がないかぎりデータは使われず、入力と答えは基盤のモデルの学習に使われません。
出典:Microsoft Copilot および Microsoft Copilot Chat におけるエンタープライズ データ保護
私なら、使う人それぞれに、自分の画面で盾が出ているかを一度見てもらいます。 盾が出ているかを、使う人それぞれが自分の画面で見る。誰か1人が確かめて終わり、にしないためです。
学習に使われないことと、どこにも残らないことは別
入力と答えは、監査のために記録され、会社の Microsoft 365(Exchange)に保存されます。 チャットに上げたファイルの保存先は、本人の OneDrive for Business です。 Web の検索に使う言葉は、入力から作った数語で、利用者や会社の識別子を外して Bing に送られます。広告主には渡されず、Microsoft 365 とは別の規約で扱われます。 具体的な管理の機能がどこまであるかは、契約しているプランしだいです。
出典:Microsoft Copilot Chat プライバシーと保護


エージェント(特定の仕事向けに用意された AI の助手)を使うときは、そのエージェントのプライバシーの声明と利用規約も、あわせて確かめます。
出典:Microsoft Copilot および Microsoft Copilot Chat におけるエンタープライズ データ保護
学習に使われないことと、記録が残らないことは別の話です。 「学習に使われないなら、何を入れても消える」と受け取りやすい所なので、社内で伝えるときは分けて話したほうがいいと思います。
なお、個人のアカウントで使う Copilot の扱いは、私は確かめていません。ここに書いたのは、会社のアカウントで使う Copilot Chat の話です。
設定を確かめたあとも、社外秘は入れない
設定は「学習に使われるか」の話です。入れてよい情報の線引きは、設定とは別に決める。私はそう考えています。
ここまで見てきたとおり、学習に使われない使い方でも、入れた内容がしばらく保たれる場面はあります。 個人の Gemini なら、オフでも72時間。会社の Workspace なら、管理者が決めた期間。会社の Copilot Chat なら、監査のための記録です。
会社で生成AIを使えるようにしたときは、サービス・プラン・毎月の費用・セキュリティを資料にまとめて、何度か説明を重ねました。 ルールを決め、費用も認められて、会社として契約する形になったんです。 そのとき、社外秘の情報は入れないことも、あわせて説明しました。
説明は、すごく疲れました。
それでも、社外秘の情報を入れないという線は、設定がどうであっても動かしていません。 設定を確かめたから何を入れてもいい、という考え方には、私ははっきり反対です。
確かめたことは、次の5つに分けて書き出すと、社内で共有しやすくなります。
- 使っている人ごとに、個人のアカウントか会社のアカウントかを書き出した
- 個人の Gemini なら、「アクティビティの保存」がオンかオフかを本人に見てもらった
- 会社の Workspace なら、対象のエディションかを管理者に聞いた
- 会社の Copilot Chat なら、緑色の盾が出ているかを見た
- 社外秘の情報は入れない、と使う人全員に伝えた
私なら、この5行を、そのまま上に見せる資料の1枚目にします。 いくつ、今日のうちに確かめられそうですか。
社外秘を入れない、のような決まりを、社内のルールとして文書にする進め方は、次の記事にまとめました。


まとめ
- 学習に使われるかは、サービスの名前より先に、個人か会社かのアカウントで変わります。
- 個人の Gemini は「アクティビティの保存」、会社の Workspace は対象のエディションか、会社の Copilot Chat は緑色の盾を確かめます。
- 学習に使われない使い方でも記録が残る場面はあるので、社外秘の情報は入れません。
確かめたことを、サービス・プラン・費用・セキュリティと合わせて、上の人が判断できる資料にまとめる進め方は、次の記事にまとめました。


Next Creations は、中小製造業向けに、現場の流れに合わせた業務システムの個別開発や、ホームページの制作をしています。生成AIを社内で使い始める前の段階で迷っていても構いません。上の5つのうち、確かめられなかった所を1行添えて、お問い合わせのページから送ってください。メールなら info@next-creations.jp です。
この記事で確かめた資料
この記事の Gemini と Copilot Chat の説明は、次の Google と Microsoft の公式ページで確かめました。
- Gemini アプリのプライバシー ハブ
- Google Workspace の生成 AI に関するプライバシー ハブ(対象のエディションの一覧は、このページからは確かめていません)
- Microsoft Copilot Chat プライバシーと保護(日本語は機械翻訳のページです)
- Microsoft Copilot および Microsoft Copilot Chat におけるエンタープライズ データ保護(日本語は機械翻訳のページです)
ChatGPT は、公式のページを今回確かめられなかったため、この記事では扱っていません。設定の名前や画面の文言は、提供元が新しくすると変わることがあります。お使いの画面で一度確かめてみてください。

