エクセル管理の限界|業務アプリでシステム化する替えどき

エクセル管理の限界|業務アプリでシステム化する替えどき

「替える必要はあるのか」と社長に聞かれても、うまく答えられない。表は、今もちゃんと回っているからです。 私も、在庫管理などを Excel の管理表で、工夫しながら回してきました。重くなれば作りを変え、同時に更新できない待ちは後回しにしていました。 Excel を続けてはまずいと思ったのは、今が無理だったからではありません。「これが5年、10年続いたら」と考えたからです。 まずは今の表の困りごとを、工夫で消えるものと消えないものに分けるところから試せます。

替えるかどうかは、件数や人数の目安では決まりません。 私が大事だと思うのは、表を工夫しても残る困りごとが、毎日の待ちや写し直しになっているか。そして、それを何年も続けられるか、でした。 重さや月の切り替えのように、工夫で軽くなる困りごとなら、Excel のままでいいと私は考えています。

よくある悩み
「まだ Excel で回ってるよね」と言われると、替えたい理由をうまく言えません。
日向創
Excel で回るうちは、Excel でいいと私も考えています。見るのは、工夫しても消えない困りごとのほうです。
目次

重くなった管理表は、月でファイルを分ける作りに変えてしのいだ

最初にやったのは、Excel をやめることではなく、Excel の作りを変えることでした。

製造業の会社に入ったころ、在庫管理などは Excel の管理表でやっていました。 管理表は関数でつながっていて、月が変わると新しい月を横に足していく作りです。過去の月は、非表示にしていくだけでした。

ところが、非表示にした過去の月も、関数は計算し続けます。 使えば使うほど、ファイルは重くなっていきました。

すごく重いなと感じました。今思えば、作り方そのものにも問題がありました。

当時は、まだ生成AIがありませんでした。 そこで、ファイルを月で区切ってテンプレート(毎月の元にする、ひな形のファイル)にし、月ごとに切り替える形にしました。 月をまたいで引き継ぐ数字があったので、VBA(Excel の作業を自動にするプログラム)で必要な部分だけを切り出し、テンプレートに入れて引き継げるようにしました。

今だったら、このやり方はやらないと思います。 それでも、重さには、表の作りを変えることで手を打てた。そこは確かです。

私も、セル間の打ち間違いや、記入漏れに気づくのが遅れることには手を焼きました。 こうした困りごとは、入力の決まりや表の形を見直すことで、軽くできる方向のものです。 表の工夫で軽くなる困りごとは、まだ Excel の中で手を打てると、私は見ています。

ファイルが重くなったとき、シートを減らす前に確かめたい所は、次の記事にまとめました。

表を工夫しても、同時に入力できない待ちと、人の頭の中にしかない対応は残った

表の作りをいくら変えても、消えなかった困りごとがあります。 同時に入力できない待ちと、知っている人しか動けない状態です。

社内サーバーの在庫管理表は、誰かが開いていると更新できなかった

Excel で在庫管理表を作り、社内サーバーに置いて、生産管理と組立の現場で毎日使っていました。 現場は、その日の組立数を入力し、足りなくなりそうな部材を生産管理に連絡します。表の数字は仮で、実際の数は現場しか分かりませんでした。 生産管理は、支給部材と購入部材を毎日入力していました。 さらに作業員も、受け入れの作業で、ほぼ毎日同じファイルを使います。

誰かが受け入れの作業でファイルを開いていると、ほかの人は見ることはできても、書き込めない。 そのせいで作業を同時に進められず、それぞれの部署で待ちが出ました。

社内サーバーの在庫管理表を受け入れが開いているあいだ、生産管理と組立の現場は見ることはできても書き込めず、それぞれ待ちが出る

最初は「面倒だな、後回しにすればいいか」と思っていたんです。 でも、それが続きました。

毎日、です。

振り回されているうちに、仕事はどんどん遅れていきました。 あなたの職場にも、朝からずっと誰かが開いたままのファイルはないでしょうか。

「開いている人が閉じるまで待てばいい」は、1回なら正しいと思います。毎日の待ちになると、話が変わる。 表の中身を工夫しても、1つのファイルを同時に更新できない仕組みは変わりません。私はここで手を打たず、後回しにしていました。 それが、アプリを作ろうと考えるようになったきっかけです。

社内サーバーの Excel を同時に編集できない理由と、アプリの前に試せる手は、次の記事にまとめました。

見に行かないと分からない表では、知っている人しか動けない

もう1つ、気になっていたやり方があります。Excel へのベタ打ちです。 ベタ打ちは、ほかの表とつながない形で、数字を手で直接入力することを指します。

私が見てきた現場では、管理の中心が Excel という所が多いと感じます。 データを Excel にベタ打ちして、社内サーバーのフォルダに保存する。その情報を見るには、毎回フォルダまで行って、ファイルを開かなければいけませんでした。

ファイルどうしが関数でつながっていればいいのに、ベタ打ちなので、つながっていない。 知っている人は、目当ての情報にたどり着けます。知らない人は、まったくたどり着けません。いわゆる属人化(特定の人にしか分からない状態)です。

社内サーバーのこのフォルダに入っている、とは教えてもらえます。けれど、1つずつ開いてみるまで中身は分からないんですよね。 どの仕事にも、だいたい決まった流れはあるはずです。それなのに、進み具合も、今日何があって何をしなければいけないかも、見えませんでした。

正直、おかしいと思っていました。仕事の見える化(誰が見ても、今どうなっているかが分かる状態)は、ほとんどできていなかったからです。 Excel は、使い勝手のいい道具だと思います。ただ、データをみんなで共有する作りには、基本的になっていない。私はそう感じていました。

不良で返したものが戻ってくると、人によって対応できなかった

組立に使う購入品と支給品も、Excel で管理していました。 数の差異が出る。返却する。不良で返したものが、戻ってくる。そうしたことが重なって起きます。

Excel の中で、更新すること自体はできます。 たとえば不良で返したものが戻ってきたとき、その場で対応できればいい。でも、人によっては対応できませんでした。 対応のルールが、その表の作りの中で決まっていたからです。

項目を足したり、別のシートを足したりすれば、短い間なら回ります。ただ、長くは続きません。 海外で作っていたものでも、そうしたことが起きていました。原因が分からないまま、お金で解決していたこともあります。 売上が抜けていたことも、生産管理システムへの入力漏れもありました。

どれも、見える状態になっていない。だから、人の頭の中だけが頼りでした。

その人の頭の中にしかない項目は、その人が休んだ日に、誰も代わりに動けません。原因が分からないまま直すと、同じことがまた起きます。

結果として、利益をどこかで削ってしまう。 人の頭の中だけが頼りになるのは、人ではなく仕組みの問題だと、私は考えています。

替えどきは「今は無理か」ではなく「何年も続けられるか」で考えた

Excel を続けてはまずい、と思ったとき、考えていたのは今のことではありませんでした。先のことです。

正直に言えば、短い間なら Excel で全然回るんです。 項目を足し、別のシートを足し、知っている人が覚えておく。それで、今月も来月も回ります。

2年、3年、5年、10年と続けたら、どこかでおかしなことが起きる。そう思いました。

「うちはまだ、そこまで困っていない」と思うかもしれません。私も、今が無理だとは思っていませんでした。 それでも、どこかで大きな間違いを起こす危うさが、会社全体にある。そう感じました。 中小企業では、人の頭の中だけが頼りになっている所が多いと、私は見ています。

項目やシートを足して知っている人が覚えるやり方は、短い間なら回るが、何年も続けると大きな間違いの危うさと人の頭の中だけが頼りの状態が残る

そう思ったときに、システムを使う、アプリを作る、という考えになりました。 目指したのは、必要な人が必要なときに作業でき、進み具合をつかみやすいアプリです。

替えどきは、今困っているかではなく、何年も続けられるかで考える。これが、私の目安です。 今の表を、5年後も同じ人が同じやり方で回している姿を、思い浮かべられますか。

「何行を超えたら替えどき」のような、数字の目安を探したくなる気持ちは分かります。 Microsoft のサポートページ『Excel の仕様と制限』によると、1つのワークシートの大きさの上限は 1,048,576 行・16,384 列です。 このページを確かめた範囲では、「何行を超えたら別の仕組みに替える」という目安は書かれていませんでした。

出典:Excel の仕様と制限

私が困ったのは、行の数ではありません。毎日の待ちと、人の頭の中にしかない対応でした。 「上限に届いたら替えどき」という考え方には、私は違和感があります。 だったら、上限に届くのを待たずに、困りごとの中身を見たほうがいい。

業務アプリに移ったあとも、会社だけの決まりに合わせて直し続けた

Excel での管理から、今の業務に合わせて作った自作のアプリに移り、ほかの人にも使ってもらい始めました。

入りは、すごく良かったんです。 今の業務に合わせて作ったので、あまり迷わずに使えると感じました。

ただ、操作は覚えてもらう必要があります。 そして運用してみると、直す所がいろいろ出てきました。会社には、その会社だけの決まり事やルール、やり方があるからです。 たとえば利益の考え方のように、いくつもの項目が重なっている所は、運用して初めて見えました。

作って終わり、ではありませんでした。 いや、正確には、作ってからが始まりでした。

使う人の声をもらいながら、運用しながら直し続けました。 直すほど、どんどん楽になっていく。これは、使いながら実感していることです。

業務アプリは今の業務に合わせて作り、ほかの人に使ってもらうと会社だけの決まりから直す所が出てくるので、声をもらいながら直し続ける

移ると決めるなら、完成品ではなく、直し続ける前提で決めたほうがいいと、私なら考えます。 業務アプリに移っても、毎日入力するのは人のままです。減らしたいのは入力ではなく、待ちと写し直しのほうです。

作ったアプリを、部署のほかの人に使ってもらうまでにぶつかった壁は、次の記事にまとめました。

うちの表が替えどきかは、工夫しても残る待ちと写し直しで確かめる

今の表の困りごとを、表の工夫で消えるものと、消えないものに分けてみてください。 私が経験した困りごとで分けると、次のようになります。

困りごと 表の工夫で手を打てるか
ファイルが重い 打てる。表の作りを見直す
月ごとのシートが煩雑で、月の切り替えが手間 打てる。表の形を変えてみる
打ち間違いや記入漏れに、気づくのが遅れる 打てる。入力の決まりで、早く気づけるようにする
同じファイルを、同時に1人しか更新できない 表の中の工夫では変わらない。毎日の待ちが残る
開かないと分からず、知っている人しか対応できない 表の中の工夫では変わらない。人の頭の中だけが頼りになる

上の3つだけなら、Excel のままでいいと私は考えています。Excel が悪いわけじゃないんです。 見るのは、下の2つが毎日の待ちや写し直しになっていないか。そして、それを何年も続けられるかです。

じゃあ、今の職場で何を確かめればいいか。次の項目に、いくつ当てはまるかを見てください。

  • 同じファイルが空くのを待つことが、毎日のようにある
  • 同じ数字を、別の表やシステムに写し直している
  • 表を開かないと、今日やることが分からない
  • 返品や戻りのような例外の対応を、知っている人が限られている
  • 項目や別のシートを足して、しのいでいる

いくつ当てはまりましたか。 当てはまったら、すぐに替える、というわけではありません。 私なら、まず今の仕事の流れを見て、どこで待ちや写し直しが起きているかを確かめます。仕組みを先に選ぶと、何を減らしたいのかが後回しになるからです。

工夫しても残る困りごとが毎日続くなら、そこから次を考えればいい。逆に言えば、そこまでは Excel で回してかまいません。 次を考えるときも、大きく変えるより、小さく試して確かめたい。私なら、本番のデータを入れないサンプルを動かして、「こう動きます」と見せるところから始めます。

まとめ:工夫で消える困りごとは Excel のまま、残る困りごとが続くなら次を考える

まとめ
  • 重さ・月の切り替え・打ち間違いのように、表の工夫で手を打てる困りごとなら、Excel のままでいいと考えています。
  • 同時に更新できない待ちと、人の頭の中にしかない対応は、表の中の工夫では変わりません。
  • 替えどきは、今困っているかではなく、そのやり方を何年も続けられるかで考えます。移るなら、直し続ける前提で決めます。

Next Creations は、中小製造業向けに、現場の作業を観察し、その流れに合わせて一から設計する業務システムの個別開発をしています。替えるかどうかをまだ決めていない段階で、今の表の困りごとを整理したい、というご相談でも構いません。当てはまった困りごとを書き出したメモを、お問い合わせのページから送ってください。メールなら info@next-creations.jp です。

この記事で確かめた資料

この記事の Excel の仕様の説明は、次の Microsoft の公式ページで確かめました。

仕様は、Excel が新しくなると変わることがあります。お使いの Excel で一度確かめてみてください。

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この記事を書いた人

製造業で10年以上、印刷・金属加工・アパレルの現場を経験。生産管理システムの構築やホームページの管理を担当してきました。Excel管理の限界にぶつかり、業務アプリを自作。2023年から生成AIを実務で使っています。IT担当者のいない中小製造業でも、人を増やさずに回る仕組みづくりを現場目線で発信しています。

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