自作のアプリで、自分の仕事はまとめられるようになりました。作業の手間も、実際に減っています。 ただ、動いたのは会社から支給された自分のパソコンの中だけでした。 ほかの人に試してもらう方法は、パソコンごと渡すことしかありません。渡せば、そのあいだ私の作業は止まってしまいます。 まずは、渡す前に何が足りないのかを、4つに分けて見るところから始められます。
足りなかったのは、アプリの出来ではありませんでした。 自分のパソコンの外で動く場所、それまで見ていた人への見え方、クラウドを使う許可、本番のデータを入れずに見せる方法の4つです。 中身を磨くより先に、ほかの人が触れる形を用意する。そこが順番だと、今は考えています。
自分のパソコンの中でしか動かないと、試してもらうにもパソコンを渡すしかない
最初の壁は、アプリが動く場所でした。
私が作れたのは、会社から支給されたパソコンの中で動くアプリだけでした。いわゆるローカルの環境です。ローカルは「そのパソコンの中だけ」という意味で、ほかのパソコンからは開けません。 いきなりクラウドのサービスに上げることは、当然できませんでした。クラウドは、インターネットの先にあるサーバーで、アプリやデータを動かす使い方を指します。
そうなると、ほかの人に作業を代わってもらうにも、アプリを試してもらうにも、自分のパソコンを渡すしかありません。 渡しているあいだは、私の作業が進まず、何もできなくなりました。
ほかの人が試すたびに、作った本人の手が止まる。これでは「ちょっと使ってみて」と気軽に声をかけられません。
もともと私がアプリを作ろうと思ったのは、社内サーバーの Excel がきっかけでした。誰かが受け入れ作業でファイルを開いていると、ほかの人は中身を見られても、書き込めませんでした。 同時に作業できるようにしたくて作ったのに、今度はアプリのほうが、私のパソコンの中だけで動いている。そんな形になっていました。


「いいものを作れば、みんな使ってくれる」は、半分しか合っていないと私は思います。 便利かどうかを見てもらう前に、相手の席から開けるかどうかで止まってしまうからです。 中身を磨く前に、ほかの人が開ける場所が要る。私の場合、そこが最初に足りなかったものでした。
社内サーバーの Excel を同時に編集できない理由と、その解決策は、次の記事にまとめました。


アプリの中で管理を完結させたら、それまで見ていた人に見えなくなった
2つ目に足りなかったのは、アプリに移した情報の見え方です。
自作のアプリでは、それまでみんなで共有して見ていたものを、アプリの中で管理するようにしました。 アプリの中では、管理がきれいに完結します。 ところが、もともとその情報を見ていた人には、共有されなくなりました。
| 作業のしやすさ | 見ている人への見え方 | |
|---|---|---|
| 社内サーバーの Excel のころ | 更新できるのは同時に1人だけ | ファイルを開けば、誰でも中身を見られた |
| 自作のアプリにしてから | 自分の作業はアプリの中で完結する | それまで見ていた人には見えない |
Excel が悪いわけじゃないんです。社内サーバーに置いた Excel は、作業はしにくくても、開けば中身を見られました。 アプリに移したことで、その「開けば見える」が消えてしまったわけです。
たとえば、これまで社内サーバーのファイルを開いて、在庫の数を確かめていた人がいたとします。 その情報をアプリに移すと、その人はどこを見ればいいのか分からなくなります。 作業はしなくても、毎日その数を頼りに動いている人です。
「アプリにすれば、情報がまとまって見やすくなる」という考えには、私は少し違和感があります。見やすくなるのは、アプリを開ける人にとっての話です。 アプリに移した情報は、それまで見ていた人に届かなくなることがある。ここは、作る側が見落としやすいところだと思います。
私なら、アプリに移す前に、今その表を「見ているだけの人」を書き出します。 見ているだけの人も、使う人に数える。そうすると、アプリの中に閉じてよい情報と、外にも見せ続ける情報を、分けて考えられます。 あなたの表を、作業はしないけれど毎日のぞいている人は、誰でしょうか。
みんなが届く場所に置くには、クラウドを使う許可が要った
ほかの人に使ってもらうには、アプリをクラウドに上げるしかありませんでした。 ただ、クラウドに上げるのはすごく難しく、そこでセキュリティの問題が出てきました。
そこが、すごくネックになりました。セキュリティの問題をどう解決するかは、すごく難しいと個人的に思いました。
私が説明したのは、パスワードの管理と管理者の権限
私は、パスワードの管理や管理者の権限などをきっちり押さえておけば、基本的には問題はないと考えました。 管理者の権限は、誰が人を足したり設定を変えたりできるかを決めるものです。 その考えを説明して、クラウドで使うこと自体は認めてもらえました。
ただ、これはあくまで私の考えで、セキュリティを保証するものではありません。どこまで押さえれば足りるかは、会社の決まりによって変わります。 私なら、アプリの画面を見せるより先に、どこに置いて、誰が入れて、誰が設定を変えられるかを説明します。許可を出す側が最初に知りたいのは、そこだと思うからです。
使えるクラウドは、名の知れた大手に限られた
クラウドで使うことは認めてもらえても、どのサービスを使うかでは、また壁がありました。 クラウドのサービスを1つとっても、説明して分かってもらうのは難しく、安全かどうかを判断できない。 そのため、使えるのは一般的な大手のクラウド(Amazon Web Services か Google Cloud)に限られ、選択肢はすごく少なくなりました。
小さな規模で安く回せるサービスもあります。 ただ、海外のサービスにデータを送ることになるため、セキュリティ上の理由で許可されませんでした。
許可を出す側から見れば、知らないサービスの安全を自分で確かめる手立てがないのは、無理もないことです。そこは、いくら説明しても変わりません。 だったら、選べる範囲の中で、まず見せられるものを作ればいい。私は、そう考えています。
生成AIを会社で使えるようにしたとき、上の人が判断できる材料を資料にそろえた進め方は、次の記事にまとめました。


本番のデータを入れないサンプルで「こう動きます」と見せる
本番のデータが使えなくても、サンプルを動かして見せることはできました。
私は、アプリをバックエンドとフロントエンドに分けて、別々のサービス(Render と Vercel)で動かして見せたことがあります。 本番のデータは、その中には入れられませんでした。
- バックエンド
-
データをしまったり、計算したりする、裏側の部分。
- フロントエンド
-
使う人が見て操作する、画面の側の部分。
- サンプル
-
本番のデータを入れずに、動きだけを見せるためのもの。
本番のデータが入っていないサンプルを見せて、意味があるのでしょうか。 私は、あると考えています。サンプルで「どう動くのか」を見せる分には、十分です。
「本番で動かせないなら、作っても仕方ない」とあきらめるのは、いちばんもったいないと私は思います。 本番のデータを入れずに、動きだけを先に見せる。それなら、置き場所の許可の話が決まる前でも、前に進められます。
じゃあ、どう見せるか。 私なら、使う人のアカウントを何人分か作って、それぞれでログインしてもらいます。そのうえで「こういうものを作ろうとしています」と見せます。 自分のパソコンを渡さなくても、相手は自分の席から触れる。ローカルのときには、これができませんでした。
私が見せるなら、順番は次の3つです。
- 本番のデータを入れないサンプルを用意する
- 使う人の分だけアカウントを作る
- それぞれでログインしてもらい、動きを見てもらう
見せるのは、あくまで動きです。本番のデータは入れない。ここは崩さないほうがいい、と私は考えています。
サンプルに本番のデータを入れないでください。見せるための仮の置き場所でも、会社が許可した場所でなければ、会社の情報をそこに置くことになります。
渡す前に、足りないものを4つの問いで確かめる
ほかの人に渡す前に、自分に聞いておきたい問いは4つです。 私は、自分の仕事が楽になったあとで、この4つが足りないことに気づきました。
- このアプリは、自分のパソコンの外からも開けるか
- 今その情報を見ている人に、アプリに移したあとも見えるか
- 置き場所と、パスワードの管理・管理者の権限を説明できるか
- 本番のデータを入れずに、動きを見せる方法があるか
あなたのアプリは、4つのうち、いくつに答えられそうですか。 全部がそろうまで待つ必要はありません。全部そろうのを待っていたら、いつまでも渡せないからです。
私なら、4つ目のサンプルから手を付けます。 サンプルなら、許可を待つあいだにも見せられる。大きく変えるより、小さく試して確かめるほうが、相手にも話が伝わりやすいと考えています。
まとめ:中身を磨く前に、ほかの人が触れる形にする
- 自分のパソコンの中だけで動くアプリは、試してもらうたびに、作った本人の手が止まります。
- アプリに移した情報は、それまで見ていた人に届かなくなることがあります。見ているだけの人も、使う人に数えます。
- クラウドの許可を待つあいだも、本番のデータを入れないサンプルで「こう動きます」と見せられます。
Next Creations は、中小製造業向けに、現場の作業を観察し、その流れに合わせて設計する業務システムの個別開発をしています。 自分で作ったものを、どこに置き、どう見せればいいかで迷っている段階でも構いません。迷っていることを1行書いて、お問い合わせのページから送ってください。メールなら info@next-creations.jp です。









